2006年09月14日

飲み屋の作り方[10]--オープンまであと1ヶ月

床はがし01.JPG 水道工事01.JPG


■2004年11月中旬:やっと物件契約

 この時期あたりから、記憶があいまいになっている。
 いや、よーく覚えてるんだけど、いったいどの作業をどの順で進めていったのか、判然としない。それだけ慌ただしく、夢中だったってことか。


 11月中旬、無事、物件の契約をした。これで大手を振ってこの場所に出入りできる。
 いよいよ頭の中にしかなかった計画が形になり始めるのだ。部屋の鍵が城の鍵に見える。
 しかしドアの固さは初めてここに来た時から変わらない。ひどい時は、ドアノブに手ぬぐいかなんかを巻いて引っ張らないと開かない。枠と扉が当たっている部分の塗装が厚いせいのようなので、どこか目立たないところを少し剥がした方がいいかも知れない。
 まずは菓子折りを持ってご近所に挨拶回りに行く。
 しかしお隣の店は…前々から気にはなってたんだけど…この日も営業の様子がない。夕方、恐る恐るドアのガラスごしに覗くと、カウンター椅子の上に人の足の裏が見えた。どうやら寝てらっしゃるらしいので、また後日出直すことにした。
 
 早く部屋をカスタマイズしたくてたまらず、夜、さっそくホール側のクッションフロアー(床紙)を剥がしにかかる。
 床の仕上げは、ある程度使用感がある感じがいいと考えていた。それでいて、ボロくない感じ。じゅうたんはイメージじゃないし、予算も合わない。できれば剥がしっぱなしが理想だ。でもそれが難しそうなら塗装しよう。
 でも、以前関わったお店で床を塗装した時、椅子の下や歩くところがバンバン削れて、中途半端に汚らしい感じになってしまったことがある。床用の防水塗料なら大丈夫なんだろうが、これはいかんせん色数が限られる。緑とかグレーとか水色とか、プールみたいな妙に発色のいい色ばっかでイメージじゃない。なので、削れていくのを覚悟で普通の塗料を用意した。
 ま、とにかく剥がしてみましょう、とほぼ新品のクッションフロアーにカッターで切り目を入れて、一気にベローッといく。
 しかしプロに忠告されていた通り、やっぱり一部残ってしまう。でもそのためにちゃんとスクレイパー(ヘラみたいな形の剥がすための道具)を用意してある。二人して床に張り付いてゴリゴリ。…思ったより取れない。
「…これはもしかしたら金タワシみたいなもんの方がいいのかな…」
「金ブラシはどうですかね?」
「そうか。あっアルコール吹いたら糊が溶けるかも」
 というわけで、サビ落とし用に使う金のブラシと消毒用アルコールの二刀流に切り替え、更にゴリゴリ。時間はかかるが意外といける。
 剥がしてからすぐに、今後どうなるかを想像したくてテーブル位置などにテープでマークをつける。やっぱり実物になると想像よりも狭いな。
 床には後日、無色透明な下地材を塗る。本塗装をする前に下地材を塗っておくとしっかりと強い仕上がりになると木ごころの柳沢さんに教えてもらったのだ。
 しかし剥がした後の床の模様と色(正確にはクッションフロアーを張り付けた時の糊の残り)がいい感じだったので、色を被せてしまうのはもったいないかな…という気もした。
 
 階段部分には元々Pタイルが入っていた。これも本当は変えたい。しかしどういう仕上げにしたものか…と悩みつつ、はじっこの方をちょいといじると、すっかり老朽化していて簡単に剥がれた。下から真っ黒な面が出てくる。どうやらタイルの糊が固まったもののようだ。既に乾燥しきっていて、ベタついたりはしない。しかも結構かわいい。筋模様が手ぬぐいの古典柄を思わせる。
 何よりタイルを剥がすこと自体がなんだか快感で、考えながらついつい勢いで全部剥がしてしまった。どっちにしろタイルのまんまじゃ嫌なんだからいっか。とにかく階段にも下地材を塗っておこう、ということになった。
 
 木ごころの柳沢さんと揃って現場入り。
 まずは図面に従い、キッチン側だけ残したクッションフロアーの上にマジックでカウンターを立ち上げる箇所の印をつけていく。
 …ところが。
 端からメジャーで測りながら印をつけてったのに、図面と実物のサイズが合わない。
 何回か測り直したり図面の数値を計算し直してみたりするが、やっぱり実際の方が小さい。
 どうやら部屋が微妙に曲がっているらしく、測る箇所によって長さが違っているのだ。図面上では部屋の1辺しか測らずに描いてたから…。
 焦るあたし達を落ち着かせるように、柳沢さんが言う。
「現場合わせって結構あるんですよ。これはもう、直接いきましょう」
 というわけで、マジックで床に直接、1/1の図面を引くことになった。これは間違いようがないが、もしや冷蔵庫とか入らなくなったり、自分達の通り道がなくなったりするのでは…?
 いやなんとか大丈夫、納まりました。
 1/25の図面上ではさして気にならなかった数ミリが、現場ではものすごく重要なことになるのだな。頭では分かっていたつもりだったけど、身にしみてよく分かりました。…と言った舌の根も乾かぬうちに、後日またしても同じ問題で頭を抱えることになる。
 
 そうこうするうちに水道屋さんが来た。気さくな若い職人さんで、いろんな話をしつつ、手元はチャカチャカっと作業を進めていく。
 この日は現状の水道から引きたい場所までホースを伸ばす作業と、排水管の設置。ちゃんと水道が付くまではしばらく水が使えないので、トイレは昼休憩で行っとくか、もしくは駅の公衆トイレへ。これは結構キツかった。
 
 同日にガス工事。
 これは高円寺のエネスタの人に来てもらう。
 希望の工事内容は既に伝えてあって、下見にも来てもらっていたのだけど、現場でまた一つ問題が発覚した。
 こちらで用意していたガス瞬間湯沸器は「元止め式」というヤツなんだけど、あたし達が必要としているものは「先止め式」というヤツでないとならないというのだ。
 「元止め式」はいちいち湯沸器のボタンを押さないと湯が出ない。蛇口を捻れば湯沸器が作動するのは「先止め式」。そんな違い御存じでした?見た目はどっちも同じフツーの湯沸器なんすよ。
 湯沸器を取り付ける場所と水場は離れている。たかだか大股で3歩くらいの距離とはいえ、ボタン押してからダッシュするというのもせわしない。2人いるんだから「すいませーん1番お願いしまーす」とか言ってボタンを押してもらうか?よくあるよね、百貨店とかで使う隠語。ちなみに○井ではトイレのことを”えんぽう”と言います。昔バイトしてた焼き鳥屋では”百番”だった。いやいや、そういう問題ではない。
 結局「ご説明が不足していましたので、その価格分は施工代から差し引きということで」ということになり、木ごころさんが後日新しく先止め式を手配してくれることに。がしかし、行くアテのない「元止め式」湯沸器が手元に残ることになった(そしてコイツは今もまだウチに転がっている。誰かいらない?)。
 
 上下水の配管が終わった時点で、キッチン内の床の高さがどれくらい上がるかが確定した。図面上では15cmで計算していたのだけど、実際には最低でも17cmにはなってしまうことになった。元々ある排水管の場所までが遠いから、水勾配をつけるとどうしても高くなるのだ。
 17cmか…。たった2cmといえども、目線の高さにしたら結構な違いが出る。カウンターの高さも上げないと、座ったお客さんをえらく高みから見下ろしてしまうことになる。
 業者さん達が帰ったあと、出来上がった配管の間に板を渡し、1人がその上に立ってみた。1人はカウンター椅子(サイズを見るため先に1脚だけ搬入してあった)に座り、予定の位置についてみる。
「……」
「……」
「……やっぱり(目線)高いなぁ」
「うーん…」
「なんとかして椅子の高さも上げないと…」
「椅子の下も床上げるとか?」
「…予算的にどうなんでしょうかね?」
「高くなりそう…だし、椅子後ろに引いた時落ちそうで恐いよね」
「うーん…脚分解してまん中の棒だけ変えたりできないかな」
 というわけで、椅子の脚の分解にチャレンジしてみる。が、よくよく見てみると、座面が回転する仕組みの部分は棒と一体型となっていて外すのは無理。床に接する円盤部分と棒とは取れそうだけど、今は円盤の裏面で留まっているボルトを外す道具がない。
 仕方がないので、翌日道具を揃えて出直すことにする。
 
 懸案だったアンペア増量問題は、特別に格安で作業してもらえることになり、さらに全ての手配を電気屋さんが代理でやってくれることになった。この工事はまた後日、ということで、まずは今あるブレーカーを外し、新しいブレーカーを入れて配線だけする。
 作業してもらっている間に、カウンター椅子の分解にとりかかる。スパナやらレンチやら持ってきて試したが、サビついててびくともしない。
 唸っていると、電気屋さんが「ちょっと貸してみな」と代わってくれた。
 しかし、ちょっとへこんだ位置についているので、普通のスパナだとガッチリ掴めない。レンチに変えるが、ボルトのサイズが微妙にイレギュラーらしく、きちんとはまらない。
 その場にいた全員ががんばってくれたけど、結局外すことはできなかった。
 仕方がない。高さを上げるならイスの脚だけ買い替えるしかない。予定外の出費だが、だからと言ってお客さんを見下ろすわけにもいかない。
 すると、柳沢さんが以前勤めていた中目黒の家具屋さんを紹介してくれることになった。そこはそういった家具パーツの取り扱いもあると言う。更に、社販価格で譲ってもらえるように頼んでくれた。ありがたい!
 その日の工事が終わるとタクシーを飛ばしてその家具屋さんに向かった。カタログを見るとちょうどいいのがあって、納期も間に合うという。早速オーダーすると業者扱いということで、特別に送料をサービスしてくれた。重ね重ねありがたいこってす。
 余ることになった低い方の脚は、後日オークションで完売した。あの子たち、今頃どんな風にリサイクルされてるんだろう。もし買ってくださった方がここを見つけたら、ぜひどんなことになってるか教えてください。
posted by 高円寺ごち:営業時間19時〜3時/杉並区高円寺北2-7-13高円寺銀座ビル3F右/03-3338-7077 at 06:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 開店記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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